技術者はめくらない

 

麻耶先生の生み出した英雄性皆無の主人公、メルカトル鮎の短編集。貴族探偵に比べるとうっとおしさが薄く、読みやすいと思います。

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｢死人を起こす｣・・・確かに気付かせない形で伏線が張られまくっていたし、現実的にも無茶とは言えない設定なのはうまいというほかないです。、まじめに考えていた人が納得するかというと…？あと、古い日本家屋は隣の部屋の会話が内容を把握できるほど筒抜けなので、襖を閉めていたからといって、電車の音がした方向を間違えるというのは、呑んでいたことを考慮しても苦しいと思います。

｢九州旅行｣・・・絶対何か罠があるんだろうと思っていると、その通りの展開になるという、コントのような話。事件現場が事後ではなく進行中だったというのを、不在票と蓋から導き出す過程が秀逸な分、パズルの欠けが単なる嫌がらせだったというのは拍子抜けです。

｢収束｣・・・所謂リドルストーリーや多世界ものではなく、事が起きる前(厳密にいうと確認する前)に終わってしまい、故に冒頭の三篇の内、どれもが可能性としてありうるというかなりの奇形。典型的なミステリー自体を読みなれていない人は、そもそもはじめの三話の意味もわからずに流してしまいそう。そういう意味でこの人の作品はある程度上級者向けだと思います。

｢答えのない絵本｣・・・登場人物名が軍艦であるという点は、艦これのおかげで少しは有名になったであろうか…？一瞬本当に犯人不在以上の回答は得られないの！？と考えて、いやいやこの作者の文章をそのままとっていいわけがないよね、と再考。機械に関する供述は正しいことが書かれているとして、問題は試験問題を見るという動機が、メルカトルの想像でしか無い事で、ここを疑う余地はあります。本当に鍵穴をこじ開けて、いないと思っていた被害者に出くわして咄嗟に襲ったのであれば、いくらなんでも被害者は後ろから殴られ、抵抗した跡も無いという風にはならないだろう。つまり、初めから殺すつもりで入り、油断したところをガンとやった、と。それが出来るのは物理的に鳳しかいません。ただ、他のサイトの意見をいろいろ見ていると、私の意見はピッキングまでした理由が弱いかな、と思います。

｢密室荘｣・・・先の作品で頭をフル回転させられたので、もうおまけみたいな扱いで。よい子は真似してはいけません。